自転車の後部座席から見える景色
子どもの頃、自転車の後部座席に乗るのが苦手だった。
母親は車の免許を持っているけど運転をしない人で、母と子だけだと、自転車か徒歩しか移動手段がなかった。
運動神経が悪い人で、自転車は度々ふらついた。
母は時折、きゃーっと大声で悲鳴をあげた。
ふらついても、どっしり構える人だったらそんなに怖く感じなかったかもしれない。
けれど、母自身がびくびく運転するから、自転車で移動する日は恐怖だった。
特に坂が怖かった。
母は何回言っても 、きゃーっと叫びながら坂を下るから、怖いやら恥ずかしいやらで、憂鬱なことの一つだった。
母は大好きなのに、行動がスマートじゃないから、誰かに見られると恥ずかしかった。
妹の背中と母の背中で前が見えなくて、いつ坂を下るのかびくびくとしていた。
気持ちの準備をしようと横を向くと体重が傾いてしまうみたいで、怒られるし怖いしで、あの頃の光景も、まだしっかり覚えている。
子どもといると、何気ない風景をすごく思い出す。