ケチ
父親は大酒飲みだった。
週の半分は飲みに行っていた。
お酒のためのお金は出す人。
けれども、家族のためのお金は学費以外はほぼ出さない人。
家族でドライブに行ったことがある。
観光地は通り過ぎるだけ。
果物狩りをねだっても、必要ない。
土地の名物を食べたいとねだっても、お父さんは食べたことあるから必要ない。
喉が乾いたから何か飲み物を買ってほしいとねだっても、水を飲めと。
この水がクセモノだった。汚らしくて。
何度も使ったペットボトルに水道水を入れ凍らせた物。
しっかり洗わないから容器が汚くて。
同じ物を何度も使うから、飲むのに勇気がいった。
汚いと言うと母親がヒステリーを起こすから飲むしかなかった。
水筒はもっと汚いから、それも恐怖だった。
山を見に連れて行ってはもらったけど、楽しそうな親子連れを見るだけで、なんにも楽しいことはなかった。
留守番をするという選択肢も与えてもらえずら従うしかなくて、苦痛だった。
子ども時代の思い出で、楽しいことは本当になんにもないのかもしれない。
子ども達に聞かれるから、子ども時代の楽しい、思い出の一日を頑張って思い出そうとするけれど、なんにも思い出せない。